Nirava, the owner of the izizi

インドの手織り綿と恋に落ちた男

インド・プーナでIZIZI(イズイズ)ブティックといえば、名の知れたブティックとして、西洋人たちに受け入れられている。斬新なデザインとインドの手織り綿などで洋服を作りつづけている。そのオーナー・ニラバ氏は、一見、いかつくも、あるいはジェームズボンド風にも見えるが話してみると気さくで陽気なおじさんだった。彼が語る彼の恋、それは熱く燃えていながら、暖かな優しさに溢れていた。



僕は、インドの布地…カディと恋に落ちた。 ここインドでは手織り綿のことをカディと呼んでいる。しばらくして、僕はイカットをインドで見つけた。もともとイカットはインドが発祥の地。ここからバリや日本へ伝わったものだ。

当時、僕の財布には数万円しかなかった。そのわずかなお金で僕はカディの布地を買って、ズボン、中国の農夫がはいているズボンを製作して、それを売った。それはあっという間に売れて、その売れたお金でまた新たにカディ生地を買って、またズボンを作って売る。それを繰り返しているうちに、やがてそれがブティックになっていったんだ。いまはIZIZIとしてインドのプーナでは少しは名の知られたブティックになったが、それはもとはといえばたった数万円からはじまったんだ。

ブティックというと、聞こえはいいかもしれないが、 だけどね、僕の経済的な状況はいまでも当時と何ら変わりない。たった数万しか僕のポケットにはないよ。だってね、お店が大きくなって、商売が大きくなって、その分、アレンジしなくてはならないことが多くなって、布地の種類やデザインもたくさんできて、その分、仕入れにお金が必要になってきて、なかなか大変だよ、ハッハッハッ!

izizi


ブッダパンツっていうのはね、僕が一番最初に作った中国の農夫のズボンのスタイルのことさ。それをブッダパンツという名前をつけて売り始めた。それは、まぁ、子どものオムツみたいな格好と見えなくもないが、これが結構うけてね、相当の枚数を作って売った。最初のデザインだったんだ。それを皮切りに、次から次へといろいろなデザインで洋服を作った。もちろん、インドのカディが主流だった。

Q: 最近、ニラバはすばらしいものを発見したという噂を聞きましたが、何を見つけたのかを教えてくれませんか?

僕は、この6年間というもの、インドの草木染めに熱中していた。草木染めの素晴らしさに惚れてしまったんだ。その可能性をインドでどこまでやれるか試してみようと、僕は自分の機織人の一人をインドのとある山に住んでいる草木染めの師匠のところに送り込んで、草木染めをマスターさせようとしていた。数年のち、彼は一人前になって、戻ってきたが…彼は手に素晴らしい技術を身に付けて戻ってきたんだが、しかし、彼はまったく使いものにならなかったんだ。技術は素晴らしかった。ただ、彼には納期にしっかりと注文の品を間に合わせるとか、そういうことがまったくできず、多大な迷惑をお客さんにかけることになってしまった。


カラー・チャート
だから、僕はもうどうしたものか、考え込んでしまった。草木染めを習うというのは、そう簡単にできることではない。いまさら、また別のインド人を山の師匠のところに送り込むというのも、もうやりたくなかった。だから、半分諦めかけていたところ、ある日、一人のイタリア人が僕の店にやってきたんだ。彼女は鞄から一枚のチャートを差し出すと、彼女がソーシャル・ワーカー(地域の民生委員)として働いているインドの村では、こういう素晴らしい草木染めがあるのだが、おたくでそれを使ってみないかというのだ。

「これだ!」

そのとき、僕の腹は決まっていた。この草木染めはとても素晴らしくできている。よし、とにかく彼女のいうその村へ視察に行ってみよう。ちょうどそこに、日本人の女性、ハリマが居合わせて、彼女もその話しを聞くととても興味を持った。それで彼女と二人で、そのインドの田舎にでかけた。 僕たちはそれを実際に見るや、もう感激したし、大いに驚いた。かくも美しい草木染めがこの世にまだ存在していたとは、とても信じることができないほど、美しかった。いまははっきりとこう言える。このインドの自然染めは世界で最も美しい染めだとね。

Q: 草木染めは色落ちしやすいと思いますが?
草木染めとか、自然のもので染めたものと聞くと、特にインドの自然の染めと聞いたらね、「よくないよ。洗っているときの色落ちがひどいし、すぐにはげてしまう。」というのが最初の印象だと思う。だけどね、それは本当ではなかった。その村に行って、それをやっているのをこの目で確かめたが、彼らのやり方では決して色落ちしない素晴らしい布地ができる。

どうするかというと、まず最初に植物や木の根っこ、虫や鉱物など、とにかく自然にある材料から色の結晶を彼ら独自の伝統的なやり方で抽出する。時としてごきぶりや牛の糞まで使うことすらあるよ。そうして抽出された色の結晶を砕いて、それをまた溶かし、またそこからさらに純度の高い結晶を抽出する。これを何べんも繰り返すんだ。これをインドの伝統では"Bhasma"の技法と呼んでいる。自然のものから得られた色素でも、このように純度が高い状態になると、それで染められたものはそうは簡単には色落ちしないんだよ。

確かに、草木染めのものでも色落ちはする。ただ、色落ちの仕方が違うんだ。ゆっくりとゆっくりと色が褪せてゆく。何年かかかって、少しづつゆっくりと色落ちしていくんだ。それはまるで最初に作られたジーンズのような風合いだよ。リーだったか、誰かによって最初に作られたジーンズは それは麻にインディゴという植物の色で染められていた。

Q:ということは、その草木染めというか、鉱物も使うということは正確には自然染めはジーンズのように色が褪せていくってことですね?
ジーンズがあれほどにも人気があるのは、それがとてもいい感じで色褪せていくからだ。それは実は草木染めなんだ。洗っていてもその色が水に流れているのはよくはわからない。実際、あまり落ちていない。それよりも、草木で染められたものは、太陽の光で色褪せる。その色が褪せていく感じはこれはとても美しい。だから、みんなジーンズが、それがいい感じではげていくから、好きなんだよ。

それとは反対に、化学染色のものが色褪せると、これは見られたものじゃない。でも、草木染めは、その色褪せがいいんだ。それが年月とともに色褪せて、やがてはほとんど白っぽくなってきても、その風合いがまたいい。だから、みんな草木染めを好むんだね。

内の店のお客さんにあるアメリカ人がいてね、彼はリネンの草木染めが欲しいと言ってきた。ただし、50回洗って、それを太陽にさらして干したものと、100回洗って100回干したものと…それらと一緒にもともとの生地とを一緒にまず見せなさいと言ってきた。それで彼がその50回ものと100回ものと、何もしていないものを比べて、確かにいい感じで色落ちしていると納得したら、内の草木染めを買いたいと言ってきたんだ。このアメリカ人はうるさいとも言えるし、彼は本物を追及している人だともいえるね。だがね、僕には100%自信があるよ。あのアメリカ人はそれを見たとき、大満足して買っていくだろうとね。だから毎日大変さ。洗っては干して乾かし、また洗っては…。

Q: 伝統的なもののほうが、本当は良かったんだってことがありますよね
そうなんだよ。僕たちが視察に行った村では、昔からのやり方を、インドの数千年の伝統的な草木染め、自然染めを今でもやりつづけている数少ない村なんだ。それはとても質が高い。にもかかわらず、こういう本当に質のいいものは、インドに限らず、世界中のいたるところで死に絶えようとしている。

タイでもしかり。タイでは昔は自然染めのものしかなかったが、産業革命とともに、大量生産の技術の波がやってきて、こういった伝統技術は廃れてきた。いまではね、チェンマイのある一つの通りでしか、タイの伝統工芸はお目にかかることはできない。昔ながらの傘や手織りのシルクを展示する目的でやっているだけさ。

インドにしても似たりよったりの状況だ。手織り職人は仕事に溢れている。彼らは本当は大変すぐれた職人だし、代々その技術を伝えられてきた人々であるにも関わらず、彼らには仕事はない。彼らは道端で野たれ死ぬ寸前だよ。工場が紡織糸を買い占めて、その上に大量生産された製品を市場に低価格で出しているから、もう彼らの手織りは太刀打ちできない。誰ももう彼らの織り出す極上な草木染めには目をくれなくなってしまった。

2000年ほど前は、インドの染色と言えば、それは世界で最も美しく高価なものとして知られていた。人々は口々に「インドの染色技術はすばらしい」と語っていた。ところがだ、化学染色が普及した現在では「インドの染色、そんなものは煮ても食えんぞ!」とみんなが馬鹿にしている。いまでは、それがかつても世界でもっともすばらしいという評価だったなどということは、思いもよらないこととなってしまった。

Q: あなたは実際にこの自然染めを試したことがありますか?
このチャートに出ている色のうち、僕は実際に10色を試してみた。僕が自分で洗濯機を回して、そして干して…。でもね、色落ちはまったくなかった。僕は仕事柄、インドの化学染色ものも使うことがあるけど、だから、何回も洗った経験があるが、これは始末が悪い。色落ちがひどすぎるんだ。それに比べたら、この草木染めはまったく色落ちしない。しっかりと染まっているよ。

でも、みんな草木染めと聞いただけで、すぐに色落ちすると思ってしまう。確かに色落ちはする。でも、洗濯のときよりも、太陽の光にさらされて、それで色落ちするんだ。光に弱いと言えるけどね。だから、日陰干しをすすめるよ。仮に色落ちしてきても、その風合いがまたいい。白っぽく色あせてきても、それがまた、なんとも言えずいい感じなんだよ。

いまね、僕にはこんなすばらしいアイディアがある。子どもたちのために草木染めのベッドシーツを作ってあげようと思うんだよ。想像してごらんよ。生まれたばかりの赤ちゃんが草木で染められたベッドシーツにつつまれてスヤスヤ眠っている。とてもビューティフルじゃないかい。それで僕がどうするか知っているかい?僕はね子守り唄を歌ってあげるのさ---ルラルラルゥラ、ララララルゥルゥ…(Real Audio G2)(ニラバはインタビューの終わりに子守り唄を歌う)



Nirava and his Japanese partner, Halima

ニラバと彼の日本人のパートナー・ハリマ(写真右)は、インドの伝統工芸である自然染めにぞっこん。そして、いま、彼らは子供達のために自然染めのベッドシーツを製作しようとしている!

もし、彼らのやっていることに興味がおありでしたら、IZIZI boutique(A4 Ashiyana Park, North Main Road, Koregaon Park, Pune, India TEL:0091 20 6138969)かemail : izizi@axess.comで彼らにコンタクトを取ってみてください。


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