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 再録「インド映画は面白い!」同人誌より

(記事は2年ほど前のものですが。。。)
*インド映画が面白い!!(1999年あたりに友人の同人誌に載せたものの再録です)  

今日は銀座に南インド映画、スーパースター、ラジニカント主演の「ヤジャマンー踊るマハラジャ2」を観に行った。
昨年の、「ムトゥ*踊るマハラジャ」の大ヒットで、いよいよ日本でもインド娯楽映画の夜明けを迎えた感がある。
今年は各地方の映画取り混ぜて9本ほど封切られるらしい。うれしいかぎりだ。
字幕つきできれいな画像でみられれば最高である。(でも、あの映画と一緒になって、泣き、笑い、歌い、歓声をあげる、一時流行った「ロッキー・ホラー・ショーの客」状態のインドの観客がいないのがちとさびしいが)

インドでは年間700本も映画がつくられている。インド以外でも、インド映画は西はアフリカ、中近東,東南アジア、フィジー等結構広い範囲で見られている。私たちはこの宝の山にやっとありつけるのだ!

 サタジット・レイの文芸映画の印象しかなかった日本人が、あけてびっくり玉手箱!一本の映画の中に,涙場面あり、アクションあり、コメディあり,感動シーンあり、スリルあり、恋におちた2人が突然歌い踊りだすと、お金をかけた映画では、あれ、ここはもしかしてスイスの山?オーストラリアの平原では..ロンドンの町では?あちこちで2人が恋をささやいてる。そしてときには、恋の踊りを踊る彼のうしろでは、群舞boysが、彼女のうしろでは、群舞girlsがきらびやかな衣装で激しい踊りを踊ってる。
 特に圧巻は、結婚式の踊りのシーンである。色とりどりの民族衣装のダンサーたちがみごとな踊りをみせてくれる。歌と踊りのシーンなくしては、インド娯楽映画ではない!のだ。いくら悲しいストーリーでも彼らは歌い踊り、表現する。特に歌と踊りが好きな私が、ここで話を脱線すると、年々映画で踊られるダンスが面白いものになってきた。フィルミー・ダンスは、インド各地方の古典舞踊、民族舞踊、ブレイクダンス、モダンダンスなどの混ざった、まさしくマサラなダンスで、先日NHKや、日テレの取材でもやったように、ダンスマスターがその場でダンサーに振付けていく。
 一般的には、キスやベッドシーンはご法度なので、恋する気持ちをダンスで表現するのだが、これが年々、服装などもふくめ、2人のからみあい踊りがはでになって、こっちのほうが、西洋映画のラブ・シーンよりセクシーに感じられて、もうたまらん!のです。
 歌は専門のプレイバック・シンガーが歌うので、くちパクだけどインドの俳優は、踊れないと話にならん。余談:マイケル・ジャクソンは、インド映画に影響されて、名作「スリラー」をつくったんだって。

 あと、脱がずにセクシーに見せる方法として雨、川、滝に入るなどしてずぶぬれになり、服がぴったりはりついて・・というやつ。(‘98年秋、私は本当にキスしてちょっとベッドシーンのある映画を見た*PremAggan:愛の炎*ので、興奮して、インド人の友達に言ったら、彼女は、最近の傾向だ、と言っていた。もっともまだまだ保守的な社会でレズビアンをテーマにした社会派の映画*Fire*を上映したデリーの映画館などは焼き討ちにあっている。)


2人が恋におちて、ふっと風が吹いて・・実は否定してたけどひとり自分の部屋に戻るとあの人のことが心に焼き付いて…、親に反対されて引き離されてしまったけど、忘れられない・・あなたに会いたい・・せつない・・もう次に踊りのシーンがはじまりそうだ・・というときのあのワクワクする気持ちがたまらない。インド映画評論家の松岡環さんや次郎丸章さんなどはこれを、日本の歌舞伎の型がきまるときとか、時代劇のチャンバラシーン、もっとわかりやすいかたちでは、水戸黄門が印籠をだす直前の気持ちとかになぞらえて、「日本人は様式美に慣れているから、インド映画を理解できるだろう」と言ってました。I Think So Too.

 様式美、といえば、3時間の中に、これだけの多彩なシーンを盛り込むのもインドの伝統芸能のナヴァ・ラサ(9つの情感:色気・笑い・哀れ・怒り・勇敢さ・恐怖・憎悪・驚き・平安)に基づいたことなのだそうだ。たっぷりフルコースを食べたような満足感である。

 最近私は、パキスタン人の経営するインド映画レンタルヴィデオ屋さんに通いつめて、画像は悪いけど、いろいろみている。字幕ないのにわかるのかって?だいじょうぶ、ストーリーはわりとシンプル。それにごひいきの俳優の踊りと良い音楽が楽しめれば十分だ。細かい話は知りたければ、ヴィデオ屋のあんちゃんや、インド人の友人が教えてくれる。インドにいるときは、友人でなくとも町のインド人が得意げに教えてくれる。みんな映画が大好きだから、くわしいのだ。

 だいたいのインド人の映画の楽しみ方・・映画が封切られる数ヶ月前に映画音楽のカセットテープが売り出されるので、それを買って歌えるようにしてそれから映画館にのりこむ
 私はまず映画を見てから、いいと思った音楽をあとで買う。実際は見た映画のほとんど全部のテープを買っちゃったけど。

 本当にインド映画は不思議だ。だいたいにおいて、ヒロインは、誰がみても、美人!だけど、男優は最近は西洋系美形も増えたけど、ときどき、濃い顔のヒーローがいて、首をかしげるのだが、映画が終わる頃には、すっかり惚れ込んでいて、だんだん自分の概念がインド化していることに気づく。これは、私だけに起こった現象ではなく、インド映画を一緒に観に行った何人もの日本人女性に起きたことであることを申しそえておく。

 なぜ、私はこんなにインド映画に夢中なのだろう?私にとって、インド映画はとってもハートフルな映画なのだ。テーマは愛、なのだ。そして、映画によって、その愛のかたちは、男女の愛、友情、家族愛、村を守るヒーローと村人との絆・・などいろいろな形になる。結婚式の場面などはよくでてくるし、どんなに不良な青年でも、両親を敬ったりというところがまたインドらしく、これからどんどん解放され、西洋映画に刺激されて、生活レベルもあがってきて、映画もどうなっていくかわからないが、まだまだ健康的な発想とお色気と元気でハッピー!なダンスが売りである。玄米菜食で元気をとりもどすように、素材の生きがよく、オーガニックである。

 私は、発酵したブルーチーズのようなヨーロッパ映画も好きだけど、ときどきあまりにもスピードがはやくて、暴力的で、こわい発想や、会ってその晩すぐメイクラヴしてしまうタイプのアメリカ映画に疲れを覚えることがある。もっともインド映画も最近はすぐ銃で殺してしまう話も多いがまだまだマンガチックなところが救われる。 あと、なぜか登場人物はお金持ちで、女の子は超ミニスカート、ヒーローはみなケンカが強い、なんていう傾向もある。ボンベイあたりならいるだろうが、ふつうミニなんかはいたら、たいへんだ。やっぱりあくまで夢、実際のリアルな生活を忘れさせてくれるひとときでなければ、いけないのだ、映画は。それでも、映画の影響は大きい。自由恋愛をおおっぴらにできない大多数の人たちのなかにも、デートを楽しむ人たちは増えてきた。


 それにしても、恋の気持ちを表現するのにたっぷりと時間をかけるインド映画がいとおしい。恋人のことが恋しくて夜も寝られずせつない涙を流すなんてのは恋したことのある人ならだれでもわかるたまらないシーンだ。こういうのをやらせたら天下一品の女優にカジョルという女優がいる。目で演技する女優といわれる。それにしても、インドの男優も女優もよく泣く。インド人てエモーショナルなのかなあ。普段観光客を煙に巻いているインド人からは想像できないことだ。


さて、Are You Ready to see The Indian Movies?
町のレンタルヴィデオ屋(すみやなど)にいっても、「ムトゥ」「ダラパティ」「ヤジャマン」「ラジュー出世する」などの字幕つきヴィデオが借りられるし、今年はいろんな映画がくるらしい。「ムトゥ」の成功で、日本では、南インド映画=インド映画という感があるが、洗練された、HINDI映画も見てね。