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と言っても何処かで天災人災が起きた訳ではない。
それに比べれば大変に小さな被害で済む個人レベルの小爆発である。
うさちゃんの懸念は的中した。
『抑え込んじゃダメ』
最近、袈裟固めなぞを覚えたのがいけなかったのだろうか。
極々親しい人から「過度である」と言われる辛抱我慢に長けた根性を
押さえ込みの際の根性ヨロシクあの子の死以来発揮し過ぎていたらしい。
きっかけは些細な事であった。
些細ではあったが、何時爆発を起こしてもおかしくない
という状態にまであれこれ溜め込んだ私には些細ではなかったのだろう。
自分の意図する所が伝わらないような物言いしか出来なくなったのは
その時その時で沸き出でた思いや言葉を押し込んで無理矢理に蓋を閉めてきたからだ。
が、その自覚があまりに希薄であった為『支離滅裂』
という指摘でガクンと膝が折れたようになってしまった。
その瞬間の気持ちを言語化するのならば『悔しい』の一言だろう。
順序良く過程を踏めば支離滅裂とは言われなかったであろう論旨であると自分では思う。
しかしながら、感情面に関する話であった為、過程をすっとばせば『支離滅裂』『筋が通らない』というふうに相手方には聞こえてしまう話であったとも思う。
ナニやってんだ。アタシは。
と思った途端急降下のトーンダウン。
なんで自分の伝えたい事をきっちり整理出来ないままで言うかな。
いい年こいて支離滅裂だなんて指摘を受けるような物言いをするなんて。
その上、その支離滅裂な物言いで雰囲気悪くして。
一体ナニをやってるんだ、アタシは。
トーンダウンと同じ速度で自分に対する怒りと悔しさと情けなさ度が急上昇。
ああ、恥ずかしい、情けない。
そう思えてならず、これ以上言葉を連ねては尚の事雰囲気も悪くなろう
うさちゃんの気分を害する事にもなろう、と思って無理矢理話を切った。
悔しさと自分への怒りと我が身を恥じる思いからすっかり落ち着きを失っていたようで
水の入ったボトルをうっかり倒して床を水浸しにしてしまった。
「ちょっと待った」
うさちゃんの静止がなかったら、カップの一つも取り落として
半泣きで割れ物を片付ける羽目になっていたかもしれない。
しかし、当方ある側面においては過剰に頑固で意地っ張りだ。
自分に憤って己を恥じている時は傍が何を言おうと譲らない。
leelaが悪いんじゃないじゃん。
二人の間で起きた事は二人の責任でしょ?
なんでleelaが悪いって事になるの。
ワタシにもマズイ所があったからこうなったんだよ。
何か気に障ったんでしょう?腹が立ったんでしょう?
根気強く話し掛けるうさちゃんに何か言えれば良いのだが
とにかく自分に腹が立ってしょうがないから『違う』としか言えない。
何がどう違うかを言わねば伝わらないというのに。
どうして黙ってるの。黙ってたら何も分からないよ。
と言われた途端、涙がジリジリ湧きあがって睫が重くなった。
そうか、私は泣いてるのか。でも何故泣くんだ、こんな事で。
泣かなくてもいいじゃない。
少し困ったように笑ってうさちゃんがそう言えば言う程何故か泣けてくる。
もしかして、私は泣きたかったのだろうか、と少し思う。
あの子の死の後、正直に泣いたのは一度だ。
それも極々短時間。
その後は、淋しいだの悲しいだの言って存分に泣く間などなかったし
また、そう出来るような状態も環境も用意出来ない状況でもあった。
泣き暮らしてなんか居られない、と、気を張って張って
とにかく歩を進めねばと思いながら生活していたのだと思う。
その後に、自宅を離れ、休養と充電をはじめて二ヶ月強の時が経ち
やっと溜め込んだ物が出て来られる状態になったと感じている。
それでも相変わらず泣くのが下手なので小出しにしか泣けないでいるが。
チョコレート。
チョコレート食べなさい。
晩御飯ちゃんと食べたからいらないよ、と言っても、うさちゃんは退かず
はい、早くチョコレート食べなさい。ほら、チョコレート。
こういう時のうさちゃんは絶対にという位退かないから
諦めてチョコレート一片を口に押し込む、いや、押し込まされる。
おいしい?
甘いでしょう。ほーら、すっごいスウィートでしょ。
甘いけど、涙のせいでしょっぱいよ。
しょっぱいチョコレートかぁ。
うさちゃんが少し笑った。
その後もジリジリジワジワ小出しに泣く事一時間強。
うさちゃんにおやすみを言って目を開けたらもう朝日が昇っていた。
33年生きても私は「全てにおいて大人」にはなっていない。
うさちゃんは言う。
leelaはホントに真面目で優しい。
33年生きても私はまだまだ自分を理解していない。
ある面においてはクソ真面目な位に真面目な自分が居る事は知っていても
優しいと思える自分なぞ全く知らないままで今日も一日を始めた。
そして、泣いている時に口に含んだチョコレートはしょっぱい、という事も知らないままで生きてきたのだ。