インド万歳! |
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インド万歳! 友人の話:うん、昨日ね、雑貨屋にいって、黒ゴマをくれと言ったら、いまないというんだ。すぐに取り寄せるから、明日来いという。それで次の日に言ったら、綺麗にパックした黒ゴマを渡された。30RSだという。支払おうとしたが、よく見ると、なんだか変だ。どうみても、白ゴマを焦がしたような感じのゴマ。臭いをかぐと、なんだか焦げ臭いような感じじゃないか。それで店のおやじに、これは黒ごまじゃない!白ゴマを焦がしたやつに違いないよというと、ちょっと待てという。メーカーに聞くからと受話器をとって電話したんだ。例によってヒンディー語か、あるいは地元の言葉か、とにかく、全く理解できない言葉で話し終えると、おやじは「これは正真正銘、黒ゴマだ。焦がしたようなものではない!製造者がチャンとそう申していますから、間違いありません!」と主張する。仕方ない・・こっちも頼んだし、まぁ、30RSだから、いいかと、ひきとって帰った。 |
家で、おそるおそる袋をあげて・・・それがじつにしっかりしたパッケージになっていたので、これは確かに黒ゴマかもなと期待しつつ、パッケージを開けたら、ががーん、正真正銘、焦がした白ゴマだった!焦げ臭い!ボロボロに炭化寸前の、コゲゴマだった。すぐに、そのまま、オヤジのところに言って、ほら見てみろ!かいでみろよ!というと、オヤジは、嫌そうな顔をしながら、袋のコゲゴマの臭いをかいでいた。「ううん、確かに焦げた臭いがする・・・焦がした黒ゴマに違いない!」 まるで漫才のような、話だが、インドでは、日常茶飯事に起こるからじつに愉快だ。黒ゴマが欲しいといったら、白ゴマを焦がして売る・・・日本ではありえないような話だが、それがあるんだよ、インドでは。 この間、ヴァラナシで、チャイ屋でチャイをすすっていたら、表通りが何やらにぎやかになった。何か、路上で見世物でもやっているのだろう。人だかりができている。ふっと、目にはいったのは、7〜8歳くらいのガキが、しきりに、たぶん、知りもしないオヤジの足を肘でトントンと叩いている様子。叩かれたオヤジは、その見世物に熱中していたが、ガキがしつこく叩くので、振り向いた。振り向いて・・というか振り向いて下をみたというのが正解ないい方。オヤジがガキのほうを見ると、ガキは、足元にあるカゴのほうに目線をやって、顎で、そのカゴのほうを顎指した。オヤジは、まるで何も見なかったかのように、また、見世物を見始めた。するとガキがまた、しつこく、オヤジの足をひじで叩いている。オヤジは、それでもそしらぬ顔で無視している・・・かと思いきや、突然、振り向くと、地べたにおいてあるカゴを、持ち上げ、ガキの頭の上にのっけた。すると、ガキは、両手でカゴを捕まえて、そのまま、何も言わずに、その場を立ち去った。オヤジは、何もなかったかのように見世物をまだ見ている・・・・ いったい、何があったのか?しばらく意味が理解できなかったが、これがインドなのかと納得した。ガキとオヤジは、まったく知りもしない他人だろう。ガキは、ちびだから、ひとりではカゴを頭の上にのっけられない。それで、カゴのすぐそばにいたオヤジにオレの頭の上にのせろと言っていたのだろう。そして、オヤジは、うるさいとも、はいよとも言わず、自分のペースでカゴをガキの頭にのせた。ガキは、それが当たり前のように、ありがとうの一言も何もいわずに立ち去った。 いや、その意味がわかったとき、インドっていうのは、スゲーところだなと思った次第である。 以上、友人の話。
だけどね、まはも、まっ、似たような経験がある。まははチャイが好きだ。それで、毎日、ミルクを買いに行く。でも、ミルクを買うときには、マハはかなり慎重なんだ。必ず、「今日のミルクか?」と聞く。なんで、そんなことを聞くかというと、ミルクがよく腐っているからだ。昨日のミルクなのか、今日のミルクでもすでに腐っていたのか、は、わからん。ただ、今日のミルクだったら、腐っている可能性が少ない。それで念のため、「今日のミルクか?」と聞いて確かめる。だけどね、仮に昨日のミルクでも、インドでは、今日のミルクと答えるだろうね。ただ、わかってはいても、何回も苦(にが)い?臭い思いをしているので、何だか、確認したくなるわけ。「今日のミルクか?」と聞いて、「もちろん!」と店員が答える。そのとき、じっと目を見ながら、買うわけ。そうして、家でミルクをあけて、チャイを入れるために温め始めると・・・ミルクが固まり始める!つまり、腐りかけのミルクはぱっと見た感じ、臭(にお)いをかいだだけではわかりにくいが、温めるとすぐに固まるから腐っているのがわかる。すると、確認したのに、やっぱり腐っているじゃないか!とプンプンに頭にくる。せっかく美味しいチャイを入れようと思ったのにぃ! あとで、さっきの店員に「おいこら!今日のミルクかってきいて買ったのに、腐っていたぞ!」と怒鳴ると、「あぁあ、たまに今日のミルクは腐っています」と答えるじゃないか!こんなの日本ではないよな!今日のミルクが腐っているなんてことが頻繁に起こるなんて、まずないはず。それに、店員の反応があとで思うと面白い。腐っていただって、それがどうしたんだ。大したことじゃないよ。よくある話しじゃないか・・・・ってな具合。 だから、インドがいいんだよ!と、友人とそんな話になった。日本ではありえないようなことが次から次へと起こったりする。ここはなんでもありの国。言い換えると、みんなテキトーに生きている。そこが気楽なんだ。インドの空気は、漫才みたいに軽いから、生きているのが楽。腐ったミルクを売って、文句を言うと「ミルク?腐ってました。そんなこともありますよ」などと平然としていられる国。白ゴマを焦がして黒ゴマとして売れてしまえる国、インド万歳! |
まはのインド・シリーズ |